「台本を読んでも行動原理が分からない」
「キャラの気持ちにピンと来ない」
そんな声優志望仲間の悩みを耳にするたび、私は“読解力”の大切さを痛感します。
1. そもそも読解力とは?
─ “文字をそのまま受け止める力” だと思っていない?
多くの人が「読解=深掘り&分析」と考えがちですが、実は“書かれていることをバイアスなしにそのまま受け止める力”が出発点。
人間は無意識に “都合の良い解釈” をしてしまう生き物です。だからこそ、まず 「自分の色メガネ」を外すリセット力 が読解力の核心。
★バイアスの例
- 中世ヨーロッパにおいて赤ちゃんにハチミツを与えるのが愛情表現
いまは乳児 botulism(乳児ボツリヌス症)を避けるため絶対NG。- 武士が切腹=“凄惨な自殺” と感じる現代人
当時は名誉ある死の選択肢。時代や文化で “正しさ” は180°変わる――だから作品世界の常識を“自分の常識”で塗り替えないことが読解の出発点。
2. 声優にとって読解力が死活問題な3つの理由
なぜ読解力が要る? | 現場で起こる悲劇 | |
---|---|---|
1 | 行動原理をハズさない キャラの“なぜそう動くか”を外さない | セリフは合っているのに演技がチグハグ |
2 | ディレクション理解 演出家の意図を即座に飲み込む | 同じ指示を何度も食らいリテイク地獄 |
3 | 台本の行間を読む モノローグ・ト書き・間(無音)の意味をつかむ | “声は出してるのに空気が出来てない”と評価される |
✔ 私自身の実感
- 国語(特に現代文)は模試で全国トップ10常連
- しかし 演技の細かいニュアンス に悩むことはあっても、行動原理を見失った経験はゼロ
- 結果:ディレクションの意図をすぐ理解 → リテイクが減る → 現場で信頼されやすい
3. 読解の基本プロセス(ざっくり5STEP)
- 素読み:自分の感情を挟まない“白紙状態”で読む
- 時代・文化リサーチ:その世界の常識を洗う
- ト書き・状況整理:場所/時間/関係性をメモる
- 因果の線を引く:「だから ×× した」「だから ○○ と言った」を因数分解
- 仮説&検証:リハで演じ、違和感が出たら①に戻る
ここで “好み” “共感度” をいったん横に置けるかがカギ。
「私ならこう思う」は後回し。「この人はこう思う」を先に確定させよう。
4. まとめ:読解力=“心のホワイトボード”
- 白紙で受け取る → 作品の常識で上書き → 行動原理をつなげる
- 声優は“声の演出家”でもある。無意識のフィルターを外せる人が、台本の真意を掴み最短で役に命を吹き込める。